2017年08月15日

小惑星、10月に地球接近(日経新聞、8月15日朝刊)

 記事概要は「TC4 という名前の小惑星が、10月に地球に4万4000kmまで接近すると、欧州宇宙機関(ESA)が発表。大きさは 15〜30m 程度。」というものです。ESA の発表ページは こちら(英文)。米国 NASA, JPL の地球接近天体研究センター(CNEOS)のページは こちら(英文)。
 最接近するのは10月12日ころで、4万4000km というのは静止衛星の軌道 3万6000km のすぐ近くです。地球に突入する確率はゼロですが、仮に突入すれば、6月に柳澤先生の講演にあったチェリヤビンスク隕石と同程度の爆発になると考えられます。
 各国の天文台などが協力して観測を行う予定で、地球接近天体に関する新知識が得られるだけでなく、その監視の国際協力体制の整備にもつながり、いろいろな成果が期待されます。駿台講座は、ちょうど1月19日が吉川先生のお話になっております。乞うご期待。
posted by 駿台天文中嶋 at 10:50| Comment(0) | 日記

2017年08月08日

宇宙重力波アンテナ "LISA" について(日経,7月30日朝刊)

 コメントが遅くなってしまいましたが,7月30日のニュースについてです.
 "LISA" というのは,"Laser Interferometer Space Antenna" の略で,表題の通り「宇宙重力波アンテナ」です.2015年に初めて(というか,遂に)重力波を捕らえたのは "LIGO" という装置で,これは "Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory" の略です.
 重力波を捕らえるには,できるだけ長い距離の「レーザー干渉計」を用いるのですが,LIGO が地上で 4km の干渉計であるのに対し,LISA は宇宙空間に 250万km の干渉計を作る,というのです!また,宇宙空間には地面の震動のようなものもないので,計り知れない検出感度の増加が期待されます.記事は,計画を推進する ESA(欧州宇宙機関)がこの6月の委員会で計画を承認し,実現に向けて動きだした,というものです.LIGO の成功や,LISA パスファインダーという予備実験の成功などを受けてのことだと思われます.
 観測が始まれば,私達の宇宙観に画期的な進展がもたらされることは確実ですが,2034年打ち上げでは私がそれを解説するのは無理そうです(92歳).
 LISA のホームページ(英文)は こちら,またパスファインダーなどの解説は こちら
posted by 駿台天文中嶋 at 11:40| Comment(3) | 日記

2017年07月09日

ブラックホール地上観測(東大チリの望遠鏡、来年完成)日経7月9日(日)

 いつもの、日経日曜日の科学記事です。記事概要は、次のとおり:
 東大が進めてきた、南米チリの標高5640mチャナントール山山頂の天文台「東京大学アタカマ天文台」が、2018年に完成、19年に本格観測を始める。望遠鏡は、口径6.5mの赤外線望遠鏡で、赤外線用としては宇宙望遠鏡をもしのいで世界一の性能になる。クエーサーの中心の巨大ブラックホールや、形成途上の惑星系などの観測に威力を発揮する。また、地上に設置されているために、宇宙望遠鏡では難しい改修・改良が容易にできるというメリットもある。
 東京大学アタカマ天文台(略称 TAO)のホームページは こちら です。山頂ではすでに予備観測のための口径 1m の「miniTAO望遠鏡」が活躍しており、2011年にはギネスブックで世界最高高度の天文台に認定されています。これについては、駿台天文講座で2014年10月、本原顕太郎先生にお話いただいています。(講演要旨)
 さらに、本年12月16日の月例講座では、このTAOプロジェクト代表者の吉井譲先生にお話いただくことになっています! 乞うご期待。
posted by 駿台天文中嶋 at 16:48| Comment(0) | 日記

2017年06月25日

「原始星」ガス噴出しながら成長(日経6月25日朝刊)

 アルマ望遠鏡が、生まれたての星(原始星、私の授業では「ベビースター」)の様子を観測した、というものです。より詳しい解説記事は、アルマのサイトにあります。また、ネイチャーアストロノミーオンライン版はこちら
 星は、「星雲ガス」(これも私の授業の用語)が万有引力で収縮して高温になり、形成されます。ところがガスや流体は、一か所に集まってくると渦巻回転を始めます。これでは遠心力のため収縮が止まってしまい、高温の星になることができません。なんとかして回転エネルギー(これも私の用語で、正しくは「回転角運動量」)を外部に放出しなければなりません。これがなかなか難しく、具体的にどのようなメカニズムで放出されるのか、よくわかっていませんでした。
 今回の研究は、オリオン大星雲の中で星が生まれつつある現場で、ある方法でこのメカニズムが働いているのを観測で確認した、というものです。
 駿台講座では、7月15日に、アルマの平松先生にお話いただきます。お話のテーマはこのベビースターとは少し違うようですが、質問すれば説明してもらえるかもしれません。
posted by 駿台天文中嶋 at 08:22| Comment(0) | 日記

2017年06月22日

6月19日、毎日新聞、吉川真先生、スペースガード

 毎日新聞に、吉川先生のスペースガードのお話が出ていました。(毎日新聞の記事は、かなりネットで見ることができます。)吉川先生は来年の1月20日の講座でお話いただくことになっています。乞ご期待。
posted by 駿台天文中嶋 at 18:00| Comment(0) | 日記

2017年06月18日

「ブラックホールあぶり出せ」日経6月18日

 先週日曜日の日経科学欄は天文関係ではなかったので,ブログも一休みできました.今週からまた活動開始です.
 近年重力波で新たなタイプのブラックホールが検出され,見えないはずのブラックホールがあの手この手で観測できるようになってきましたが,今回の記事で紹介しているのは電波観測からもいろいろなブラックホールが見えるようになってきた,ということです.もちろん直接見えるのでなく,ブラックホールの周りの星雲ガスの運動から間接的にわかるということです.
 紹介されている電波観測は2件で,どちらも慶応大学の岡朋治教授のグループの研究です.最初の紹介は,本年1月の発表で「高速で動くブラックホールが星雲ガス(分子雲)を突き抜けて進んでいるらしい現象を観測した」というものです.「野良ブラックホール」というキャッチフレーズで,天文台のニュースなどで解説されています.
 2番目のものは,昨年1月の発表で「太陽の重さの10万倍という大きなブラックホールの周りで星雲ガスが高速で運動しているらしい現象を観測した」というもので,これも天文台のニュースで解説されています.記事にはありませんが,この他に「竜巻星雲 (Tornado Nebula)」などの天体もブラックホールによるのではないかと言われています.
 これらに似た天体は他にもいろいろ発見されており,それらの研究が進めばブラックホールの見方も大きく変わってくるかも知れません.面白くなってきました.
 なおこの記事の記者,中島林彦さんには,駿台天文講座で10月21日にお話しいただくことになっています.詳しくはホームページで.
posted by 駿台天文中嶋 at 18:03| Comment(0) | 日記