2017年10月08日

今年のノーベル賞,日経新聞10月8日(日)朝刊

 今年のノーベル賞の,物理学賞,化学賞,生理学・医学賞について,たいへん要を得た解説が日経に掲載されています.物理学賞の重力波については,このブログでぜひ取り上げなければならないと思っていたのですが,たいへん良い解説が出ていますので,これを紹介してお茶を濁すことにします.記事の書き手は,10月に駿台月例講座でお話しいただく中島林彦記者です.
 重力波は,この8月14日に早くも4回目のイベントが観測されました.LIGO グループの解説記事は こちら.今回の観測の特徴は,初めてイタリアの観測装置 Virgo が観測に参加した,ということです.おかげで3箇所での観測が可能になり,重力波発生源の天球での位置がかなり絞り込まれたようです.これで他の観測(可視光や電波,X線など)との同時観測が可能になれば,まったく新しい天文学分野が開かれることになると思われます.日本の KAGRA の1日も速い完成が待たれます.
posted by 駿台天文中嶋 at 11:45| Comment(0) | 日記

2017年10月06日

「超新星爆発」半日後の姿を見た 東大チーム観測(朝日新聞デジタル,10月6日)

 「重力波,ノーベル賞」のニュースが今最もホットなのですが,それはさておいて今回はとりあえず朝日新聞の別の記事の紹介です.記事本体は こちら で見られます.また本論文のアブストラクト(英文)は,雑誌ネイチャーのページ で見られます.
 報告内容は,「すばる」望遠鏡で超新星を観測していてたまたま爆発直後(約半日後)のものを捕らえた,ということのようです.このような観測は前例がなく,得られた貴重なデータから超新星爆発のメカニズムに関していろいろな発見があった,ということです.
 観測・解析のチームで中心になって活躍している田中雅臣さんは,駿台天文講座で昨年の7月16日に超新星のお話しをしていただきました.
posted by 駿台天文中嶋 at 16:23| Comment(0) | 日記

2017年09月25日

江戸時代のオーロラ絵図(日経,9月21日)

 記事の書き出しは,「江戸時代の1770年に、太陽の爆発現象によるとみられる史上最大級の磁気嵐が発生していたとする解析を、国立極地研究所などのチームが21日までにまとめた。京都市でオーロラが見えたという古文書に残る絵図が、計算で再現した見え方と一致した。」というものです.また国立極地研究所のホームページの解説は,「極地研の片岡龍峰准教授、国文学研究資料館の岩橋清美特任准教授は、江戸時代の古典籍に残る記録から、明和7年7月28日(1770年9月17日)に史上最大の磁気嵐が発生していたことを明らかにしました。」となっています.
 オーロラが見えるということは,前回,9月初めの記事のような「太陽面の大爆発(フレア)」があったということですが,この時の爆発の大きさは,今回のものよりも10倍も大きく,史上最大規模だったのではないか,とされています.NHKの解説の動画もあります.
 太陽の爆発とオーロラについて,前回のジュニア天文講座で少し紹介しましたが,次回もう少し詳しく報告したいと思います.また極地研の片岡龍峰先生にも駿台で講演をお願いしたいと考えています.
posted by 駿台天文中嶋 at 17:25| Comment(0) | 日記

2017年09月14日

大きな太陽フレア

 9月7日以来、たびたび新聞記事に取り上げられていますが、このところ太陽面で大きな爆発(太陽フレア)が発生しています。10年に1度くらいの大規模なもののようです。
 駿台学園のジュニア天文講座では、毎回太陽活動に注目していますが、ジュニア講座開始以来、こんなに大きいのは初めてです。16日のジュニア講座で、今回の9月5〜10日の爆発の模様を紹介します。
posted by 駿台天文中嶋 at 15:16| Comment(0) | 日記

重力波関係記事(日経,9月10日朝刊)

 記事の冒頭の一部を引用すると,「これまで3回観測されたブラックホールの合体に伴う「重力波」は、宇宙の離れた場所でできた2つのブラックホールが近くに引き合わされて起きた可能性が高いとする分析を、英バーミンガム大などのチームが英科学誌ネイチャーに発表した。」ということです.詳しいことはインターネットでは読めないので,後ほど天文台図書館で調べて報告します.
posted by 駿台天文中嶋 at 09:54| Comment(0) | 日記

2017年08月25日

宇宙はなぜ「物質」ばかり?(日経8月20日朝刊)

 東京大学宇宙線研究所 (ICRR) の、8月4日のプレスリリースの紹介記事です。プレスリリースは こちら
 宇宙は、その始まりのインフレーションの時に莫大なエネルギーが発生し、エネルギーから物質が生成した、と考えられます。そして、物質が生成する時は必ず等量の「反物質」が生成するはずなのですが、今の宇宙はどこを見ても反物質らしい天体は見当たりません。これは大問題です。
 昔は、見えない遠方に「反物質宇宙」があるのではないか(そこには、反地球、反人類、反私がいる)という考えもありましたが、現在では「物質と反物質は等量でなかった」と考えるようになっています。これを「対称性の破れ」と呼びますが、これは1964年に実験的に確認され、1973年にはノーベル賞の小林・益川理論によって理論的にも確認されています。
 しかしどうもこの対称性の破れだけでは、物質と反物質のアンバランスを説明し切れない、というのが実状のようです。もっと他の非対称性を探し出したいところです。
 ところで、物質は「クォーク」というものと「レプトン」というものから構成されていますが、これまでに確認された対称性の破れは「クォーク」に関するものでした。「レプトン」についてもこれが確認されれば、対称性の破れの理論は大きく進展し、物質と反物質のアンバランスを説明できることが期待されます。レプトンは電子やニュートリノですが、今回の話は「ニュートリノにおける対称性の破れを観測する」というものです。
 プレスリリースでは、「実験のデータを増やしたことにより、対称性の破れの存在を95%の確かさで示した。」と発表されました。素粒子科学の世界では、本当に確かであると言うためには99.9999%で実証しなければならないということなので、まだまだ先は大変ですが、実験機器も改良中であり今後数年以内にはかなりの確度で確認できそうだ、ということです。ニュートリノ検出部のスーパーカミオカンデも、2026年をめざしてハイパーカミオカンデ計画が進んでおり、10年後あたりにはさらに大きな進展が期待されます。
 なお、日経新聞のこの記事は、10月の駿台学園天文講座でお話いただく中島林彦記者によるものです。
posted by 駿台天文中嶋 at 12:04| Comment(1) | 日記