コメントが遅くなってしまいましたが,7月30日のニュースについてです.
"LISA" というのは,"Laser Interferometer Space Antenna" の略で,表題の通り「宇宙重力波アンテナ」です.2015年に初めて(というか,遂に)重力波を捕らえたのは "LIGO" という装置で,これは "Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory" の略です.
重力波を捕らえるには,できるだけ長い距離の「レーザー干渉計」を用いるのですが,LIGO が地上で 4km の干渉計であるのに対し,LISA は宇宙空間に 250万km の干渉計を作る,というのです!また,宇宙空間には地面の震動のようなものもないので,計り知れない検出感度の増加が期待されます.記事は,計画を推進する ESA(欧州宇宙機関)がこの6月の委員会で計画を承認し,実現に向けて動きだした,というものです.LIGO の成功や,LISA パスファインダーという予備実験の成功などを受けてのことだと思われます.
観測が始まれば,私達の宇宙観に画期的な進展がもたらされることは確実ですが,2034年打ち上げでは私がそれを解説するのは無理そうです(92歳).
LISA のホームページ(英文)は こちら,またパスファインダーなどの解説は こちら.
2017年08月08日
宇宙重力波アンテナ "LISA" について(日経,7月30日朝刊)
posted by 駿台天文中嶋 at 11:40| Comment(3)
| 日記
色々なテーマの解説記事、拝読させて頂きました。
宇宙での重力波観測、日本でもプロジェクトがあると聞いたことがあるような気がします。欧州との差や日本の優位、役割分担のあり方など、興味深く思われるところです。地上と同様、やはり宇宙でも複数の観測装置を設ける、という体制が展望されているのでしょうか。
重力波については、いくつか地上での観測実績が出たわけですが、それによって追加的に分かったことなどがあれば、またご紹介頂けたらと思います。
重力波の日本プロジェクトは「KAGRA」という呼称で進行中であり,もう一息で完成というところです.これは欧米のグループと異なって地下トンネルで極低温観測を行うので,また新たな発見が期待されます.また,重力波はその到来方向を確定するために世界各地で複数の装置が同時観測する必要があり,米国の装置LIGOの他,日本,イタリア,ドイツなどの装置が稼働を開始すれば,重力波源が光の望遠鏡でも観測されると考えられます.これは素晴らしいことです.
重力波についての解説記事を,駿台天文講座のホームページに載せましたのでご覧下さい.
http://sundai.sakura.ne.jp/TenmonKaisetsu/
さっそく有難うございました。
追加的に知りたいなぁ、と思ったのは、「宇宙での衛星による」重力波観測も、複数台の体制が展望されているかということです。地上と同様、宇宙での観測も、複数台が展望されているとすると、欧州のプロジェクトとは別に、米国や日本でも何かやるのか、ということになる気もします。
スケールの大きい話で興味深い一方、お金の問題もあるでしょうね。