2022年08月23日

「うるう秒廃止論高まる」日経新聞、8月21日(日)サイエンス欄

 「うるう秒廃止論高まる IoT社会、システム障害懸念」という記事がありました。記事の内容は、まず「うるう秒」の由来を説明し、ついで秒単位で連携稼働しているIoTの社会に「うるう秒」の導入が多大の困難をもたらすようになったことを説明しています。その結果として「うるう秒の廃止論」が高まってきた、ということです。
 時刻は本来地球の自転に基づいて決めるものだったのですが、地球自転は結構不規則であり、それに比べて格段に正確な「原子時計」が実用化されるに及んで、両者の違いが大きな問題となりました。当初は、世界の標準時はあくまでも太陽と共にある人間生活(すなわち地球の自転)が基本である、という考えだったのですが、現代は、昼夜の別なく規則的に流れる物理的な時間(すなわち原子時計)が標準である、となってきたというわけです。
 そういえば、もう世界各地の「時差」なども意識されなくなり、インターネットの時刻はすべて「世界時」(UT)で表記されるようになって来ています。もし「うるう秒」が廃止になり、原子時計が標準時になれば、記事にもあるように、遠い将来には標準時の「正午」が真夜中になるということもありうるわけですが、そのころには人々は「これは時差の違いだ」くらいにしか感じなくなるかもしれません。
 「標準時」は、筆者が東京天文台(現国立天文台)天文時部に在職していた時に担当していたものであり、1972年の「うるう秒」の導入は当時の天文時部長の飯島重孝先生が決められたものでした。19世紀末の「世界標準時」の決定の経緯にはまた別の政治力学が働いていたのですが、これについては来年1月21日の駿台天文講座、石橋先生のお話でお伺いすることになります。

posted by 駿台天文中嶋 at 16:42| Comment(0) | 日記