2017年08月25日

宇宙はなぜ「物質」ばかり?(日経8月20日朝刊)

 東京大学宇宙線研究所 (ICRR) の、8月4日のプレスリリースの紹介記事です。プレスリリースは こちら
 宇宙は、その始まりのインフレーションの時に莫大なエネルギーが発生し、エネルギーから物質が生成した、と考えられます。そして、物質が生成する時は必ず等量の「反物質」が生成するはずなのですが、今の宇宙はどこを見ても反物質らしい天体は見当たりません。これは大問題です。
 昔は、見えない遠方に「反物質宇宙」があるのではないか(そこには、反地球、反人類、反私がいる)という考えもありましたが、現在では「物質と反物質は等量でなかった」と考えるようになっています。これを「対称性の破れ」と呼びますが、これは1964年に実験的に確認され、1973年にはノーベル賞の小林・益川理論によって理論的にも確認されています。
 しかしどうもこの対称性の破れだけでは、物質と反物質のアンバランスを説明し切れない、というのが実状のようです。もっと他の非対称性を探し出したいところです。
 ところで、物質は「クォーク」というものと「レプトン」というものから構成されていますが、これまでに確認された対称性の破れは「クォーク」に関するものでした。「レプトン」についてもこれが確認されれば、対称性の破れの理論は大きく進展し、物質と反物質のアンバランスを説明できることが期待されます。レプトンは電子やニュートリノですが、今回の話は「ニュートリノにおける対称性の破れを観測する」というものです。
 プレスリリースでは、「実験のデータを増やしたことにより、対称性の破れの存在を95%の確かさで示した。」と発表されました。素粒子科学の世界では、本当に確かであると言うためには99.9999%で実証しなければならないということなので、まだまだ先は大変ですが、実験機器も改良中であり今後数年以内にはかなりの確度で確認できそうだ、ということです。ニュートリノ検出部のスーパーカミオカンデも、2026年をめざしてハイパーカミオカンデ計画が進んでおり、10年後あたりにはさらに大きな進展が期待されます。
 なお、日経新聞のこの記事は、10月の駿台学園天文講座でお話いただく中島林彦記者によるものです。
posted by 駿台天文中嶋 at 12:04| Comment(1) | 日記

2017年08月15日

小惑星、10月に地球接近(日経新聞、8月15日朝刊)

 記事概要は「TC4 という名前の小惑星が、10月に地球に4万4000kmまで接近すると、欧州宇宙機関(ESA)が発表。大きさは 15〜30m 程度。」というものです。ESA の発表ページは こちら(英文)。米国 NASA, JPL の地球接近天体研究センター(CNEOS)のページは こちら(英文)。
 最接近するのは10月12日ころで、4万4000km というのは静止衛星の軌道 3万6000km のすぐ近くです。地球に突入する確率はゼロですが、仮に突入すれば、6月に柳澤先生の講演にあったチェリヤビンスク隕石と同程度の爆発になると考えられます。
 各国の天文台などが協力して観測を行う予定で、地球接近天体に関する新知識が得られるだけでなく、その監視の国際協力体制の整備にもつながり、いろいろな成果が期待されます。駿台講座は、ちょうど1月19日が吉川先生のお話になっております。乞うご期待。
posted by 駿台天文中嶋 at 10:50| Comment(0) | 日記

2017年08月08日

宇宙重力波アンテナ "LISA" について(日経,7月30日朝刊)

 コメントが遅くなってしまいましたが,7月30日のニュースについてです.
 "LISA" というのは,"Laser Interferometer Space Antenna" の略で,表題の通り「宇宙重力波アンテナ」です.2015年に初めて(というか,遂に)重力波を捕らえたのは "LIGO" という装置で,これは "Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory" の略です.
 重力波を捕らえるには,できるだけ長い距離の「レーザー干渉計」を用いるのですが,LIGO が地上で 4km の干渉計であるのに対し,LISA は宇宙空間に 250万km の干渉計を作る,というのです!また,宇宙空間には地面の震動のようなものもないので,計り知れない検出感度の増加が期待されます.記事は,計画を推進する ESA(欧州宇宙機関)がこの6月の委員会で計画を承認し,実現に向けて動きだした,というものです.LIGO の成功や,LISA パスファインダーという予備実験の成功などを受けてのことだと思われます.
 観測が始まれば,私達の宇宙観に画期的な進展がもたらされることは確実ですが,2034年打ち上げでは私がそれを解説するのは無理そうです(92歳).
 LISA のホームページ(英文)は こちら,またパスファインダーなどの解説は こちら
posted by 駿台天文中嶋 at 11:40| Comment(3) | 日記