2016年02月27日

重力波解説記事,ナショナルジオグラフィック

 重力波の詳しい解説記事が,こちらで見られます.タイトルは「重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語」です.
posted by 駿台天文中嶋 at 16:10| Comment(0) | 日記

2016年02月25日

謎の電波の発生源を確認(2月25日付,日経朝刊の科学ニュース)

 これもなかなかの大発見です.東大理学部のサイトに 詳しい解説 が出ているので,ご覧下さい.
 新聞の報道は「宇宙から届く謎の電波 50億光年先の銀河で発生 東大など すばる望遠鏡で特定」というものでした.「謎の電波」とは,数年前に発見されて話題になっていたもので,正式には「高速電波バースト(Fast Radio Burst=FRB)」と呼ばれるものです.これは,千分の数秒という短時間のパルス電波が,ピカッと一発だけ観測されるもので,まったく原因不明でした.しかしその特徴的な振る舞いから,宇宙のはるか遠方から来るものではないかと考えられていましたが,今回それが「すばる望遠鏡」で確認されたというわけです.
 それでもまだ,そんなパルスがどのような天体からどのようにして放射されるのかは,まだまだわかっていません.一つの仮説として「連星中性子星の合体」なども考えられていますが,これはまさに先日の重力波と同様な現象であり,天文学の新しい時代の幕開けを感じさせるものです.
posted by 駿台天文中嶋 at 17:34| Comment(0) | 日記

2016年02月16日

重力波の観測(3)少し詳しい解説

 前2回で「宇宙の観測の歴史」などの時間稼ぎをしている間に,いろいろなことがわかってました.そこで,一般向けの解説記事などにあまり出ていないことを,少しまとめてみました.

1)日本のKAGRAの立場について:
 これは,日経新聞電子版,科学記者の目(2月14日付け)にたいへん適切な解説が出ています.(無料の会員登録で読むことができます.)
2)「太陽の重さの約30倍の2つのブラックホールの合体」は,なぜわかるのか:
 ブラックホール(以下,BHと略称)の合体は,「連星BH」(2つのBHが回転している)で起こります.このイメージは,どの解説文にもわかりやすい動画で示されています.この回転は「重力波」の放射によってエネルギーを失い,だんだん近づいて最後は合体することになります.そしてその間の重力波の放射の状況は,2つのBHのそれぞれの重さ,軌道の様子,などによって決まります.
 近年,この重力波放出の状況がほぼ完璧なまでにシミュレーション計算できるようになりました.次の図が,今回の報告論文に載っている図です:

GWObsCalc.png

(B. P. Abbott et al. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 (2016).)
上の部分が2箇所のLIGOで観測された重力波の形,下が太陽質量の36倍と29倍のBHが合体するまでのシミュレーション計算の波形,です.両者の一致は見事なもので,質量の誤差はプラスマイナス太陽質量の4倍程度,です.
3)距離が約13億光年というのはどうしてわかるのか:
 発射される重力波の強度がシミュレーションで計算でき,それと実際の受信強度との比から距離がわかります.
4)方向はどうしてわかるのか:
 2箇所のLIGO観測所(一つはアメリカ西海岸のワシントン州,他はルイジアナ州)への,重力波の到達時間差,などからわかります.一般解説記事の図に出ているように,2箇所の観測だけでは大きな不確定性があります.日本のKAGRAなどを含めて世界で3箇所以上が同時に観測できれば,重力波で宇宙を観測する「重力波天文学」の完成になります.
5)太陽の30倍というBHは,あり得るのか:
 実はこれは大きな問題で,これまでの「星の形成の理論」からはなかなか考えにくいことでした.今回の観測の詳細を検討すると,その可能性は大いにある,ということです.むしろ今回の観測をきっかけにこのような観測をさらに推し進めれば,星やBHの形成の理論,ひいては現在の宇宙の姿の形成の理論に,大きな新展開がもたらされると期待されます.

(とりあえず)以上.

posted by 駿台天文中嶋 at 14:58| Comment(1) | 日記

2016年02月14日

重力波の観測(2)太陽系探査技術技術発展の歴史

 前回の「観測的天文学の新しいページ」のリストは,ロケットや衛星による太陽系天体の直接探査の技術についてはリストアップされていませんでした.改めてまとめてみると,次のようになるかと思います:
1)1926年,アメリカの発明家,ゴダードが,初めてロケットの飛翔実験に成功.またこれより先に,ロシアのツィオルコフスキーがロケットによる宇宙旅行の理論を展開した.
2)1945-1950年,アメリカで,ドイツのロケットV2号にアメリカのワックコーポラルを載せた2段式ロケットが科学観測に利用され,初めて大気圏外から地球を撮影した.
3)1958年,ロシア(当時ソ連)が,初の人工衛星を打ち上げ.同じく1961年には,有人宇宙飛行も成功.
4)1959年,ソ連の月ロケットが月面に到着(衝突),同年,月の裏側の撮影にも成功,1966年には月面の軟着陸をも果たす.
5)1962-1973年,アメリカのマリナー探査機が,金星,火星,水星を探査.またヴァイキング2号は,1976年,火星表面に軟着陸.
6)1961-1983年,ソ連のヴェネラ探査機が金星を観測,1975年には軟着陸して金星表面の撮影にも成功.
7)1969-1972年,アメリカのアポロ計画で,人類が初めて月面に立つ.また多くの資料を持ち帰り,太陽系の研究が大きく発展.
8)1972年,パイオニア探査機が打ち上げられ,木星以遠の惑星の探査が進展.1977年にはボイジャー探査機が打ち上げられ,現在も太陽系外を探査中.
9)1985年,欧州宇宙機関のジオット探査機が打ち上げられ,1986年接近のハレー彗星の探査を,各国の衛星と協力して行った.これは最近になって,2015年のロセッタ探査機・フィラエ探査機の,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星着陸探査へと発展した.(本ブログの2015年9月の記事参照)
10)1989年打ち上げのガリレオ探査機は,1995年,木星に到着してガリレオの4大衛星を観測,また1997年打ち上げの土星探査機カッシーニは2004年に土星に到着,2005年には探査機ホイヘンスが衛星タイタンに着陸して映像を送ってきた.
11)1996年,地球近傍小惑星探査機,NEARシューメイカーがアメリカから打ち上げられ,2000年に小惑星エロスに到着,詳しい観測を行った.また日本の「はやぶさ」は2005年に小惑星イトカワに着陸,2010年にサンプルリターンを果たした.さらに,アメリカの探査機ドーンは,2012年に小惑星ヴェスタに,また2015年には準惑星になったケレスに到着,それぞれを詳しく撮影した.
12)1997年,マーズ・パスファインダーを皮切りに,アメリカの火星着陸探査機が次々と火星表面を探査.2004年にスピリットとオポチュニティが,2012年にはキュリオシティが着陸して,現在も探査中.
13)2006年打ち上げの冥王星探査機ニューホライズンズは,2015年1月,太陽系最果ての準惑星冥王星に到達して観測.
14)2010年に打ち上げられたソーラーセイル実証機IKAROSは,太陽光のエネルギーを受けて現在航行中.

歴史的な重力波のニュースを受けて急遽,天文観測技術の発展の歴史をまとめて見ました.
posted by 駿台天文中嶋 at 15:44| Comment(0) | 日記

2016年02月13日

重力波の観測(1)宇宙の観測技術の発展と人類の宇宙観の変化

 天文学の歴史上の一大ニュースが飛び込んできました!これまでなかなか観測できなかった「重力波」が,ついに観測されたのです.昨年の9月にアメリカの観測装置が受信した信号は,いろいろ吟味した結果,紛れもなく重力波によるものであると確定され,2月11日の記者会見で発表されました.これで天文学の歴史の新しい一ページが開かれた,といっても過言ではありません.
 
観測的天文学の新しいページが開かれた出来事を,私なりにまとめてみると,次のようになります:
1)1609年,ガリレオが望遠鏡で宇宙を見た.その後,ハーシェルが大きな望遠鏡を作って宇宙を観測し,全く新しい宇宙像を描き出した.
2)1917年,アメリカ,カリフォルニアのウィルソン山天文台に100インチ大望遠鏡が完成した.これを利用して,ハッブルが,銀河の分布する宇宙,宇宙の膨張,などを発見した.
3)1932年,ジャンスキーが,宇宙からの電波を初めて捕らえ,電波天文学が始まった.電波で観測されたいろいろな天体の中で,1963年,クェーサーという異常な天体が発見され,宇宙には想像を絶する天体があることがわかった.
4)1962年,ロケットによるX線観測で宇宙のX線天体が発見され,1966年,岡山天文台でこの天体がさそり座に同定された.これにより,大気圏外からの天体観測が開かれ,X線や紫外線,赤外線の新しい天文学が始まった.
5)1965年,波長の短い電波の観測技術が登場,これがビッグバン宇宙の名残の宇宙背景放射を確認し,宇宙に始まりがあったことが明らかになった.この短波超電波観測技術はこの後,ミリ波電波などで星雲や星の誕生などの姿が描かれるようになった.これはALMA望遠鏡として発展しつつある.
6)1967年,アメリカのヴェラ衛星がガンマ線バーストを発見.これにより,宇宙線観測の方法が新たな天文学分野として登場,現在さらに発展中である.
7)1967年,高時間分解能電波観測の技術により,パルサーが発見され,中性子星という異常な天体の存在が確認された.これはその正確なパルスによりいろいろな天文観測が行われ,重力波の存在の間接的な
8)1974年,電波干渉観測法でケーブルを使用しない長基線電波干渉計技術が確立され,高分解能電波観測や高精度位置天文観測が可能となった.特に後者で,測地学の観測制度が格段に向上,大陸移動が実際に測定された.
9)1987年,超新星爆発からのニュートリノがカミオカンデで観測された.これは星の内部を直接観測したことに相当するもので,さらなる発展が予想される.また,素粒子物理学が天文学に関わる道が開かれた.
10)1989年,電波と赤外線の中間の波長帯の高精度観測衛星COBEが打ち上げられ,1992年,宇宙背景放射の中に宇宙構造の「種」を発見した.これはさらにWMAP衛星,PLANCK衛星として発展し,宇宙年齢を138億年とするなど,宇宙論に大きな成果をもたらした.
11)1989年に打ち上げられたヨーロッパ天文学グループの高精度位置天文観測衛星ヒッパルコスは,1993年までにそれまでの位置天文観測精度を2桁以上向上させ,3次元宇宙像を大きく塗り替えた.
12)1992年,マイクロ重力レンズ現象の発見により,光を発していない天体の観測が可能になった.
13)2009年,ケプラー衛星が打ち上げられ,太陽系外惑星惑星の探査が大きく発展した.
14)2015年,重力波の直接観測に道が開かれた.

駿台学園天文講座もますます重要になってきました.
posted by 駿台天文中嶋 at 02:24| Comment(1) | 日記