2022年11月04日

古代ギリシャ、ヒッパルコスの星表

 古代ギリシャの天文学者、ヒッパルコス(BC190頃―BC120頃)は、観測天文学のさきがけをなす天文学者で、星座の表を作りまた恒星の位置(赤経・赤緯など)を測定して星の表「星表」を作りました。また過去の星位置観測データとの比較から、恒星の位置がゆっくりと変化する現象「歳差」を発見したと言われています。
 ヒッパルコスには、他にも地理学や三角測量などに大きな業績があるのですが、残念ながら出版物などはほとんど消滅しており、わずかに『アラトゥスとユードクソスへのコメント』が残されるのみでした。彼の星表なども、この中に断片的に記録されているだけでした。他に、上記のアラトゥスの著作の付属資料としてこの星表の記録があったようですが、8世紀にギリシア語からラテン語に翻訳されたその付属資料に、わずかに北極の周りの3つの星座(おおぐま、こぐま、りゅう座)の星の記録が残っているのみとのことです。また上記の『コメント』は11世紀ころの翻訳文しかなく、ヒッパルコスの星表については確かなことはわからない、という状況でした。
 ところがこのほど(今年10月)、このヒッパルコスの星表の記録の一部らしいものが、5〜6世紀の記録と思われる資料から新たに発見された、という論文が発表されたのです(英文論文はこちら、日本語解説はこちら)。
 絵画については、X線や赤外線を使った撮影によって絵の具が上塗りされる前の下絵が浮かび上がってくる、ということがよくありますが、今回の研究は、同様にいろいろな波長の光線を使うことによって消されて上書きされた文字を浮かび上がらせる、という方法で古い羊皮紙の記録を解析したものです。まだほんの少しの記録のみですが、それでもいろいろなことがわかるということです。
 駿台天文講座の来年2月の私の話は「ガイア星表」の話ですが、星表の歴史のお話の中でこのテーマを取り上げてみたいと思います。質問歓迎!
posted by 駿台天文中嶋 at 21:55| Comment(0) | 日記

2022年10月15日

地球防衛実験(その2)

 前回のブログで「実験の詳しい成果の発表はまだ先」と書きましたが、10月11日には成果の発表がありました。すでに wikipedia の DARTの項目 にも出ていますが、軌道の公転周期(約12時間)の変化が「少なくとも73秒」という見積もりが「32分」という大成功だったようです。衝突により、破片が大量に飛散した結果であるとのことです。例によって詳しい説明が ナショナルジオグラフィックのページ で見られます。
posted by 駿台天文中嶋 at 13:10| Comment(0) | 日記

2022年10月01日

地球防衛実験

 9月17日の奥村先生の「地球接近天体」のお話以降,この種の話題が特に目に付くようになりました.前回のブログに続き,9月24日の日経新聞夕刊の記事「親子スクール」では「りゅうぐう」の資料から太陽系の生命の起源を探る研究の話,また9月28日朝刊では探査機を実際に小惑星にぶつけて「地球防衛」の実験をする話,などです.(親子スクールの記事は,日経新聞電子版の無料会員になれば制限付きで読むことができます.)
 「地球防衛」の詳しい解説を探していたところ,Nikkei Views(無料会員で可)で見つけました.またさらに詳しい解説が 日経 National Geographic(同じく上記の無料会員で可)にもありました.成果の詳しい報告が出るのはまだかなり先になりそうですが,注目したいと思います.

posted by 駿台天文中嶋 at 17:06| Comment(0) | 日記

2022年09月19日

木星への隕石衝突

 9月17日の駿台天文講座は、日本スペースガード協会理事長の奥村真一郎先生の「地球接近天体探索の新展開」というお話でした。これは、「チェリヤビンスク隕石」のような災害を未然に防ぐために地球接近天体を常に探索・監視するという「スペースガード」(または「プラネタリーディフェンス」)の研究のお話です。
 今回ちょうどこのタイミングで、「木星表面での隕石衝突の発光現象を捕らえた」という研究発表がありましたので紹介します。発表は、9月14日の日本天文学会秋季年会で、タイトルは「PONCOTSによる木星での巨大衝突閃光現象の発見および詳細観測」でした。この隕石はチェリヤビンスクのものよりも大きかったと見積もられており、このような隕石の存在発見の研究に大きな一石を投じたと思います。(もっとも木星と地球では、小天体存在環境が大きく違いますが。)
 この研究の詳しい紹介が、アストロアーツのニュースページ京都大学の紹介ページ、などで見られます。
posted by 駿台天文中嶋 at 17:33| Comment(0) | 日記

2022年08月23日

「うるう秒廃止論高まる」日経新聞、8月21日(日)サイエンス欄

 「うるう秒廃止論高まる IoT社会、システム障害懸念」という記事がありました。記事の内容は、まず「うるう秒」の由来を説明し、ついで秒単位で連携稼働しているIoTの社会に「うるう秒」の導入が多大の困難をもたらすようになったことを説明しています。その結果として「うるう秒の廃止論」が高まってきた、ということです。
 時刻は本来地球の自転に基づいて決めるものだったのですが、地球自転は結構不規則であり、それに比べて格段に正確な「原子時計」が実用化されるに及んで、両者の違いが大きな問題となりました。当初は、世界の標準時はあくまでも太陽と共にある人間生活(すなわち地球の自転)が基本である、という考えだったのですが、現代は、昼夜の別なく規則的に流れる物理的な時間(すなわち原子時計)が標準である、となってきたというわけです。
 そういえば、もう世界各地の「時差」なども意識されなくなり、インターネットの時刻はすべて「世界時」(UT)で表記されるようになって来ています。もし「うるう秒」が廃止になり、原子時計が標準時になれば、記事にもあるように、遠い将来には標準時の「正午」が真夜中になるということもありうるわけですが、そのころには人々は「これは時差の違いだ」くらいにしか感じなくなるかもしれません。
 「標準時」は、筆者が東京天文台(現国立天文台)天文時部に在職していた時に担当していたものであり、1972年の「うるう秒」の導入は当時の天文時部長の飯島重孝先生が決められたものでした。19世紀末の「世界標準時」の決定の経緯にはまた別の政治力学が働いていたのですが、これについては来年1月21日の駿台天文講座、石橋先生のお話でお伺いすることになります。

posted by 駿台天文中嶋 at 16:42| Comment(0) | 日記

2022年08月14日

日経新聞記事、太陽フレアの地球への影響

 日経新聞8月13日の夕刊に「なぜ『太陽フレア』がGPSに影響するの?」という見出しで、ほぼ小学生向けの解説記事が出ています。「親子スクール」というシリーズの記事なので、親もよく読まないといけないのかもしれません。
 記事の内容は、太陽フレアとは何か、太陽フレアで何が地球に飛んでくるか、地球はどのようにしてそれらから護られているか、そして大きなフレアではどのようにしてGPSなどに被害が生じるか、などが絵入りで分かりやすく説明されています。最後は、近年これらの観測と予報の取り組みが始まっている、ということで締めくくっていますが、これに関係するお話を、駿台天文講座でも10月15日の草野完也先生にお聴きすることになっています。

posted by 駿台天文中嶋 at 13:17| Comment(0) | 日記